築地と豊洲市場を結ぶ地下鉄
築地から豊洲市場まで地下鉄で――。かなり先の話なのですが、2040年ごろに実現するかもしれない地下鉄構想というのは非常に興味深いですね。築地の地元自治体、中央区が推進している「都心部・臨海地域地下鉄構想」のことです。この構想は銀座から築地、豊洲市場を抜けて、江東区有明の東京ビッグサイトまでを結ぶ地下鉄(5駅)を整備するという内容で、都心と臨海副都心のアクセス改善を目指しています。
新銀座駅は銀座三越から近い三原橋のあたりにできるイメージです。もう少しギンザシックスに近い場所かもしれません。新築地駅は築地市場跡地の再開発エリア内でしょう。波除神社に近いあたりです。勝どき・晴海駅の立地はちょっと微妙。中央区がまとめている資料では、勝どきと晴海の真ん中の運河の上に駅ができるような書きぶりです。現時点では両論併記のどっちつかず状態なのでしょうか。ただ、すでに勝どきには都営地下鉄の駅があるから、晴海の方にできるような気がします。
残りの2駅は江東区内に整備するという構想です。中央区が勝手に隣の自治体に駅をつくる構想の旗振り役になっているのですが、まあ、あくまで構想だから問題ないのでしょう。豊洲市場に近い新市場駅は千客万来施設のあたりにできるイメージ。あるいは、もっと東京五輪の選手村に近い運河側かもしれません。終点の新国際展示場駅は文字通りビッグサイトのそばに整備されるのでしょう。
この構想がまとめれたのは2015年ごろ。その前の調査段階から国交省や東京メトロもオブザーバーになっていたとはいえ、基本的には中央区が勝手に提示した「絵に描いた餅」だったわけです。ところが翌16年に交通政策審議会による国交相への答申が出ると、少し話は変わってきます。新銀座駅から地下鉄を北に延伸して東京駅までつなげ、さらには秋葉原を経由して常磐新線(つくばエクスプレス)に接続したらどうか、といったことが書いてあったからです。
この時点では、地下鉄構想は中央区の単なる妄想ではなく、国交省も巻き込んだ形での検討項目ぐらいにはなったようです。そして昨年、東京都がまとめた「築地まちづくり方針」では、築地市場跡地の再開発エリアに「地下鉄の駅前空間」をつくる話が盛り込まれていました。東京都としても、豊洲市場まで2駅で行ける地下鉄の整備を前提とした築地再開発を考えているようです。
それにしても豊洲市場の近くに地下鉄駅ができて便利になると、「豊洲は遠くて不便。だから近くの築地に」といった話は、その前提が変わってくることになります。今の築地は魚河岸が移転してしまい、さらに新型コロナウイルスの感染拡大危機にも直面して茫然自失の状態。地下鉄構想が実現するかもしれない2040年ごろまでに、築地はもっと新しい街の魅力を確立しておかないと、かつて魚河岸があった食の街といったブランド戦略だけじゃ、とても生き残れないという気がします。