豊洲市場に足りないもの

築地市場から豊洲市場への移転は完了したことになっていますが、市場内の飲食店を見てみると、「完了」とは言い難い気がします。移転から1カ月以上が過ぎても、なお入居予定のテナントが入っていないスペースが残っているからです。

最も気になるのは、水産仲卸売場棟にオープンするとされている寿司店「山はら」。海鮮丼が人気の「仲家」のお隣に入居してくる予定なのですが、今のところ、店はシャッターが閉じられたままで、張り紙による告知もなく、情報もなし。

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かつて築地で「山はら」と言えば、アンコウ鍋が有名な店でした。しかも魚河岸の中で夜間に営業をしていた異色の存在。レトロな雰囲気の座敷で、刺身や鍋を楽しめる人気店でもありました。ひょっとして築地市場がなくなるのに伴って閉店する「山はら」が寿司店として豊洲市場に登場するのかと期待してしまったのですが、どうも怪しい感じです。

「山はら」の店主の息子さんが経営している築地7丁目にある「築地やまはら」のホームページによると、父親も息子さんの店の運営に加わるようなので、どうやら築地市場内にあった「山はら」が豊洲寿司店として復活という話ではないもよう。

となると、豊洲にオープンする予定の「山はら」は屋号を引き継いだ別の店ということでしょうか。そういえば、築地市場内では、経営者が代わっても、そのまま店の屋号は引き継ぐということはよくあったようです。例えば、「寿司大」。今の経営者の前の経営者の時代も「大」だったそうです。以前の経営者が場外に出した店も「大」でしたから、築地に市場があったころは、場内の「大」と場外の「大」の区別がついていない人も多かったようです。

さて、「山はら」を名乗る新しい寿司店はいつになったらオープンするのか。築地に魚河岸があったころ、新しい寿司店をいくつか試してみた経験からすると、あまり味については期待できない感じもしますが、寿司店が高密度で集積する激戦区の水産仲卸売場棟の新規参入ですから、ちょっと気になってしまいます。

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管理棟に目を向けると、こちらにも移転が完了していない店がいくつかあります。案内板をみると、とんかつ「八千代」、天ぷら「愛養」、イタリアン「トミーナ」、中華「やじ満」、海鮮丼「丼匠」の5店舗が未入居となっていますが、実際には「八千代」、「やじ満」、「丼匠」は元気に営業していました。残るは「愛養」と「トミーナ」。果たして、いつ豊洲にやって来るのか。

このうち「愛養」は「寿司大」の行列に参戦したことがある人ならば、馴染み深い店でしょう。築地市場では、「大」のお隣にある喫茶店でしたから。コーヒーを飲んでくつろいでいる「愛養」のお客さんから「こいつら、何時間も並んでアホだなあ」と言わんばかりの視線を向けられたのも、よい思い出です。そして寿司を食べた後、「愛養」のミルクセーキを飲むのも楽しみでした。その「愛養」がなぜ、天ぷらなのか。これも業態転換ではなく、単なる経営者の交代と屋号の引き継ぎによるものなのでしょうか。謎が解ける日が楽しみです。

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一方、「トミーナ」は明快です。「11月オープン」と書いた張り紙がありますから、これを見る限り、きっと11月末までにはオープンしてくれるのでしょう。蟹のパスタ、海鮮ピザなどを再び味わえる日は近い。というわけで、「山はら」、「愛養」、「トミーナ」が出揃うと、魚河岸グルメの地図は完成です。